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on JAZZCRITIC VOL.57 PEREZ PRADO

 
 
オー、マンボ!

 5月の連休に、一家で新潟の実家に帰省しました。オール高速道とは
言え、岩手までの550kmは走りでがあります。けだるい帰り道でSAの千
円均一CDをながめておりますと、演歌やら何やらに混じって「ペレス
・プラード楽団」がありました。

 ペレス・プラードと言えばマンボ、そして何と言ってもドリフの
「チョットだけよ」で一世を風靡した「タブー」であります。合いの手
に「ウッ!」のかけ声が入る、踊るための音楽です。日ごろは爆発した
り耽美的だったり、少々とんがったジャズを愛する者としてはまず買わ
ない代物だけど、「チョットだけ」聴いてみたくなったのです。

 その昔、開高健氏が週間プレイボーイで人生相談のコーナーをもって
いたことがあって、「風に訊け」というタイトルで本にまとめられてい
ました。「リーダーの役割とは?」との質問に答えていわく、「ペレス
・プラードというおっさんは、ただニコニコしてメンバーをながめてい
るだけであった。リーダーとはかくあるべし」とあったのを思い出した
のです。

 迷ったあげく「まあいいさ、ドライブのBGM用に千円くらい」と、
CDショップではこっぱずかしくて買えそうもない「ペレス・プラード
楽団」を手に入れました。かけてみると案の定、1曲目の「マンボ No.
5」から子どもたちはノリノリ、「タブー」で妻はドリフをなつかしん
で大うけでした。

 しかし、よくよく聴いてみると実に楽器が良く鳴っているのです。特
にトランペットの切れがすごくいいし、サックス・セクションのまとま
りもなかなかのものです。家でじっくり耳を傾けると短い演奏時間の中
に凝縮された、ラテンのデューク・エリントンとも言うべき世界でし
た。鳥肌ものはエレクトリック・ベースで、ファンキーなノリはよどみ
なく、2音ずつ弾いてコードの移ろいを絶妙に表したり、ハーモニック
スを効果的に使ったりして、もう好き放題やってくれます。

 あのかけ声も単なる奇声、蛮声ではなく、オーケストラのシンバルを
肉声でやっているような、よく練られたものだと感じました。少なくと
もキース・ジャレットのうなりよりは知的であります。

 それにしても「タブー」とはえっち方面ではなくて、キューバに連れ てこられた奴隷が故国と自由に憧れるタブーだったとは、知りませんで した。プラード氏は遠く日本であのような使い方をされていると知って いたのでしょうか。毛嫌いしないで他のジャンルの音楽を聴いてみるの も、何か発見があっていいのかもしれません。 text by 青山正紀 | Aoyama Masanori | <2000/7/3>

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